楽譜に忠実に・・・!?

2007.9.14

松江でご一緒させていただいた
アドバイザーのお1人は
G大作曲科出身の先生でした。

とても穏やかな、素敵な先生でした。

休憩時間、私はその先生に
ある質問をさせていただきました。

以前やはりステップでご一緒させていただいた
作曲家のM先生にも、同じ質問をしたのですが・・・

それは
「作曲家の方は、演奏する人に対して、
 ご自分の書かれた楽譜を隅から隅まで忠実に
 演奏して欲しいと思っていらっしゃるのですか?」
ということです。

ピアノの先生方は
「楽譜はきちんと見なさい。
 楽譜に書かれていることが、作曲家の伝えたいことの全てなのだから
 とにかく忠実に!細部まで良く見て!」
と、口をすっぱくしておっしゃいます。
実は、私も生徒にはよく言っています。(笑)

ただ、心のどこかで
「作曲家の方は、どう思ってるんだろうなー」と言うのが
ありました。
それに、作曲家自身が録音した演奏を聴いたとき
びっくりすることがよくあるのです。
『全然楽譜に忠実じゃないじゃない・・・』 (・・?

そこで、作曲家の方にお会いしたら、聞いてみよう!
と思っていたのです。

今回のF先生は、この質問に対して
様々な角度からいろいろなお話をしてくださいました。

先生が曲を作曲して、その曲が楽譜として出版される前に
試奏といっておられたかな?
ピアニストにその曲を弾いて頂くことがあるそうです。

その際、少し楽譜と違う弾き方をされ
「あ!違う・・・でも、その方がいいな!」と言うことが
あるそうです。
そして、時には楽譜を書き直されると言うことも・・・

作曲する際、たった一つの強弱記号を
どの位置に書くか、スラー1つをどう書くか
悩んで悩んで、何度も何度も書き直すことがあるそうです。

ただ、反対に、まったくこだわらず
ささっと書いてしまうところもあるそうです。

また締め切りに追われて、大急ぎで書くことも・・・

「ものすごくこだわってる部分と、
 そうでもない部分とがあるんですよ。
 そうでもない部分は、どんどん変えてくださってもかまわない。
 もっと良くして弾いて下さると逆に嬉しいです。
 その見極めをして下さると有難いです。」と
おっしゃておられました。
ただ「とても難しいことですけどね・・・」とも・・・

そして今回のF先生も、以前お尋ねしたM先生も
同じことをおっしゃったのが印象的でした。

「でもね、作品というのはね、
 世に出た時点から作曲家の手は離れているんですよ。
 1つの作品として一人歩きしているんです。
 ですからね、本当は
 楽譜を買われたその方が、自由に弾いて下さればいいんです。
 細かいことになんてとらわれなくったっていいんですよ」と・・・

なるほど~・・・

ただこの一言を聞いたから、
勝手に好きに弾いてしまっていい、ともならないな、と思いました。

この言葉の奥にあるのは
「作品を弾いて下さる方へ敬意を払う」という意味があるな、と・・・

ならば、我々演奏者も
曲を作って下さった方に、敬意を払わねばならないのですね。

楽譜に忠実に・・・
ただ単に、書いてあることを再現すればいいというだけでなく
そこに書いていないことをも見通す力を持たねばいけない、と言うことでしょう。
そして、素敵に表現できるよう「センスを磨く」・・・
大事なことはこれかもしれません。

そんなことを考えながら・・・
また明日も「楽譜をよく見なさ~~い!」と生徒たちに
叫ぶことでしょう。(笑)

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