「音楽的自立」を目指すレッスン

 中学生のMちゃん、昨日のレッスンのとき、もののけ姫の「アシタカせっき」(オープニングのタイトルバックに流れる曲)を聞かせてくれました。この曲は、一昨年の小学校のお別れ会のとき、担任の先生からのリクエストで、クラスメートやその保護者の前で演奏したものだそうです。
 彼女のお母さんがご自分のホームページの中に、彼女と彼女の弟の演奏をMIDIファイルにして載せておられたのを聞いて、「Mちゃん、今度はナマで私に聞かせてよ!」と楽譜を持ってきてもらったのです。
  楽譜はほとんどオリジナル通りをピアノ譜にアレンジしてあり、かなり難易度の高いものでした。彼女はそれを自分ひとりで練習して(レッスンに持っていけば?とお母さんは言われたそうなのですが、恥かしいから・・・と持ってこなかったようです。)みんなの前で発表したのだそうです。
 「練習大変だったでしょ」と言うと、「うん、すごく大変だった。」との答えでしたが、演奏はペダリングも巧みで、何よりとても優しい音で美しく心のこもった演奏をしてくれ、横で聞いていてジーンとなりました。「これだけひとりで弾けたら、もう私のレッスンはいらないねー。」と話しました。
 
  私のレッスンの大きな目標の1つは、子供達の「音楽的自立」です。子供達が自分の力で楽譜を読み、自分の感じたままを音にして伝えらるようになって欲しい、との願いを持ってレッスンをしているので、昨日の彼女の演奏には、本当に感動しました。
 
  彼女がうちに来たのは小学校1年の時・・・もう7年になります。その7年間のことを思うに、ピアノに対して前向きになれなかった時期も何度かあったような気がします。お母さんから、「ピアノをやめたいようなことを言ってるんですが・・・」と相談を受けた事も・・・でも、幾度かの壁を乗り越えて、今はとてもピアノとのいい関係を持ってくれているようです。
 
  どの子供達もみんなそうです。順風満帆なんて子はほとんどいません。みんな何度かの大きな壁にぶつかります。レッスンをスタートしたものの譜読みがどうもすらすらといかない頃、小学校も高学年になっていろんな事に興味が出始めピアノの練習に気持ちが向かなくなってしまう頃、中学生になってクラブや塾でくたくたになってしまう頃、思春期に突入してお母さんや先生の「練習したの?」のひとことがやけにムカツク!という頃・・・
  ですがこんな時期を少し頑張って乗り越えたら、また違った気持ちでピアノと向き合える日が来ると思うのです。どうかそんな時に「うちの子はピアノには向いてないみたい・・・」と結論を急がないで欲しい、と思うのです。この「自立」ができるまで・・・また、このHP内でも何度も書いているように、一生弾きつづけられるレパートリーが何曲か増えるまで、もうしばらく待ってあげて欲しい、と思うのです。
 
  人を育てるということは、「待つ」ことなのだなあ・・・少々気の短い私が、長い年月で子供達から教えられたとても大切な事です。(2000.4.8 日記より)