音楽は、時間空間の中を流れる芸術

 発表会も2週間後に迫り、そろそろ本番を想定してのレッスンに入っています。
 最初のお辞儀から、演奏を終えてのお辞儀まで・・・小さい子供達はどうもいつもと勝手が違うためか、椅子に座ると同時にあわただしく演奏をスタートし、最後の音を弾き終えないうちに椅子から立ち上がろうとする始末・・・演奏が始まる前の一瞬の緊張の時、そして、弾き終えた後の音の余韻を楽しむ、ということがまだできません。
 座ってからちょっと深呼吸してから弾いてごらん、と言っても間が持たないのか手を上げたり下ろしたり・・・またそのしぐさが可愛くもあるのですが・・・
 演奏前後の静寂の「空間」、曲の途中に出てくる「休符」など、音の鳴っていないところにも確かに音楽は存在するのですが・・・ちょっと小さい子達にはまだ難しいかな・・・
 
  「音楽は、時間空間の中を流れる芸術」そんな事をおっしゃったのは、作曲家の故内田勝人先生です。十数年前、大阪で数日間にわたる研修会を受けに行ったとき、講師としてお話くださったなかで何度もおっしゃった言葉です。
 先生はその、時の空間の芸術に関わる人間が時間にルーズであってはならない、とおっしゃり、研修の開始時間に1分でも遅れた人間は、会場に入ることを禁じられました。
 
 その時のことは私の中で強烈な印象として残っており、私も音楽に関わる人間の端くれ、レッスン時間に生徒を待たせたり、人と待ち合わせをする時、自分が待つことはあっても相手を待たせることはないよう、日々心がけています。
 
  内田先生はそんな風に大変自分にも人にも厳しい方でしたが、先生の作られた作品はどれも愛情に包まれた優しい曲ばかりで、発表会のときなどには時々利用させていただいています。残念な事に、その後大変にお若くして亡くなられてしまったのですが・・・
 
  ピアノを弾く技術を教えるだけでなく、今まで出会ったとても素晴らしい音楽家から学んだことを子供達に伝えていく事も、私の大事な仕事のひとつだったなー、と反省をこめて思った今日一日でした。(2000.4.15 日記より)