どうしてそんなにバイエルにこだわるの?

 先日、某有名音大を卒業されているお若い先生から、レッスンに関する相談の電話がありました。近々近所に住むピアノの先生が引っ越されることになり、何人かの生徒を預かることになったんだそうです。
 
 で、彼女いわく、「どうやらその先生って、子供の喜ぶような曲ばかりさせてるらしいんですけどね、それっていけないですよねー。バイエルをちゃんとやって、基礎をさせないといけないと私は思うんですけど・・・」と言うことでした。「あなたの言う基礎ってなーに?」思わず意地悪な私は聞いてしまったのですが・・・
 
 話によると、まだその生徒さんたちの演奏は聞いていないとのこと・・・もし、好きな曲ばかり弾いていたとしても、譜読みがばっちりできて、基本的なタッチも習得できて、音楽表現もすばらしく、生き生きとピアノを弾いていても・・・彼女は「基礎のバイエルをしないなんて・・・」と、教材を替えてしまうのでしょうか・・・
 
 要するに・・・「私が使って来たバイエル」「多くの先生方が使ってらっしゃるバイエル」を使うことが、絶対に間違いのない指導法だと思い込み、そして「バイエルでしか教えたことない」から、バイエル以外の教材で指導するのが不安なんだと思うんです。そして「そりゃあバイエルくらいさせとかないとだめよー」と言う一言が欲しくって、うちに電話をかけてきた・・・違うかな〜・・・
 
  もう1つ別な話・・・今年の初め、広島に越してきて、うちの教室に通うようになった小学4年の男の子・・・ピアノは幼稚園の時からはじめた、とのことですが、やっているのはバイエルの57番でした。どうやらこの曲も、2ヶ月以上かかっているとのこと・・・リズムだけを叩かせてみても、音符を読ませてみても、すらすらとはいかない・・・これまでの曲も、1曲ずつあーでもない、こーでもない・・・と先生に注意されまくり、なんとか覚え弾きできた時点でマル・・・となっていたようです。
 過去、バイエル以外にやった曲は発表会で弾いた2曲のみ・・・(それももちろんもう弾けない・・・・)あ〜何てこった・・・
 
  バイエルがもう世界的に見ても、ほとんどの国で使われていない教材だ、と言うことは、Q&Aでも書きました。でも、バイエルを使っても、とってもすばらしい指導をしていらっしゃる先生はたくさんおられます。ただこの先生方は、絶対にだらだらは使わない・・・必要なポイントを押さえて、1.2年でさっさと終わらせておられます。
 
 バイエルを、5年も6年もかけてだらだら教えるなんて・・・工夫も何にもありゃしない。そして、なかなか進まないのは、練習しない生徒のせいにしてる・・・これはピアノ教師の怠慢!月謝どろぼー!
 
  昔々は子供の導入の教材と言えば、バイエルとメトードローズくらいしかありませんでした。でも今は・・・もう数え切れないほどの教材が出てきています。
 
 ピアノの先生方、もっと教材研究しましょう。工夫しましょう・・・どんなに不器用な子でも、どんなに練習嫌いの子でも、5.6年ピアノを習っていれば、お友達や親戚のおばちゃんに聞かせて自慢できるくらいの曲4〜5曲位持たせることは、お月謝を頂いているものの務めではないですか?
 
 バイエル57番じゃ、自慢にもなりゃしない・・・あなたの教室で、だらだらバイエルを弾き続け、結局最後までも行かないでやめてしまった子・・・その子はきっとそれっきりピアノの蓋を開けていないでしょうね。
 言い過ぎ?でもすっきりした!