10年ピアノを習っても、人前で弾く曲のない子供達・・・ |
先日、このHPを見たという、大阪のHさんという方からこんなメールをいただきました。ご本人の承諾を得て、転載します。 「私はもうすぐ31歳になる主婦です。ピアノは大好きで4歳〜15歳まで習っていたのですがあまり才能がないのか、ツェルニー30番までしかいきませんでした。大人になってからも、たまに弾いたりしていたのですが先生のおっしゃる、レパートリーというものを持たずにやめてしまっているのでとても後悔しています。今でも、弾きたい曲は沢山あるのですが私には難しい曲ばかりで、ずっと諦めていたのですがもう一度、ピアノを習ったら弾けるようになるかしら・・と最近、夢をみています。(後略)」 実は、先月からうちにレッスンに来ることになった中2の女の子も、このHさんと同じように、もう10年近くもピアノを習っているのに、最初にレッスンに来られた日に「何か弾いてみてくれない?」というと、「え?何も弾けません。」という答えが返ってきました。チェルニー30番とソナチネを持ってはいましたが、2冊ともあまり好きではないようで、ほとんど進んでいませんでした。このような状態で、何とかやめないでいる事が奇跡的に思えました。 今は私たちが習っていた頃と違い、たくさんの教材や指導法が紹介されてきています。それでも依然として昔からの「バイエル→チェルニー→ソナチネ→ソナタ」というお決まりカリキュラムを押し付けられ、たった1曲のレパートリーさえ持てずにピアノをやめてしまう子供達がなんて多い事か・・・チェルニー30番まで行けば(行かなくても・・・)弾きこなせる素敵な曲はいくらでもあるのに・・・ 結局ピアノの先生方が、自分の学んできた路線が一番正しいと信じ、それから脱線する事をためらっておられるのだと思います。その路線でやっていけずにやめてしまった子のことは、ピアノに向いてない、今の子は忙しすぎるんだから仕方ない、ということで片付けておられるような・・・ 私がチェルニー30番もソナチネも、必要ないと思う子には使わない(もちろん必要だと思う子にはばっちり使います・・・)と言うと、「それでいいの?」と言われたことがあります。「それで何が悪いの?」と逆に聞きたいです。100人生徒がいれば100通りのスタイルがあり、その生徒にベストな方法を考えるのが指導者の仕事なのに・・・ ある主婦の方が、「自分の子供には、ピアノだけは習わせたくない。自分が習っててちっとも楽しくなかったから・・・」と言われた、という話を聞きました。悲しい話です。ある雑誌には「今のままでは、日本のピアノ教育は絶望的」と書かれていました。本当にその通りだと思います。 ピアノを10年以上習っても、人前で弾ける曲が1曲もない・・・そんな信じられないような事実が、現実としてたくさんあります。何とかしなくてはいけない・・・と思うのです。 |