卒業試験・・・

 数日前、元うちの生徒のMちゃんから電話がありました。 彼女は今、地元の音楽大学のピアノ科4年生です。 23日の火曜日の午後、卒業試験があるから聞きに来て欲しい、と言うのです。

 彼女の卒業試験はとても楽しみにしていたのですが・・・ そんなに間近で言われると、レッスンの振り替えがどうにもなりません。

 「Mちゃん、どうしてもっと早く連絡してくれんのん? ぎりぎりにレッスンを変更するのが、どんなに大変かくらい少しはわかるでしょ? あなたもね、もうすぐ社会人になるのなら相手の都合とか もう少し考えられるようにならないと・・・」と、まずはお説教・・・

 彼女いわく、20分近くにも及ぶ今回の大曲、 なかなか思うように弾けなくて、とても私に電話する気にならなかったのだそうです。 でも近くなってくると、どうしても来て欲しいと思うようになって・・・ 「先生、私の4年間の集大成の演奏です。どうしても聞いて欲しい・・・」と彼女・・・

 いろいろ話し合った末、昨日の土曜日、 試験会場と同じホールでリハーサルがあると言うので そちらを聞きに行って来ました。 久しぶりの彼女の演奏・・・なかなか地に足のついた、彼女らしい素敵な演奏でした。

 彼女との付き合いは・・・うーんともう14年くらいになります。 その頃はまだ若かった私・・・どちらかと言うと、教える仕事よりも ピアノや電子オルガンの演奏の仕事のほうが面白く、 あちこち駆けずり回っていました。

 そんな時にやってきた小学生の彼女・・・ 本人もお母さんも大変熱心で、はじめて小学生のうちから コンクールに出たい・・・お母さんの口から将来は音大に・・・と言う話も出るような 生徒さんでした。

 ですが私としては、今1つ自信がなくおろおろ・・・ それから私の指導者としての修行(?)が始まったわけです。

 大学の先生のお宅に連れていけば、こっぴどく叱られる彼女の後ろで 自分が叱られるよりももっと冷や汗をかき、 彼女が次々と挑戦する大曲を、必死で研究しました。 接する時間が多いだけに、反抗期の時にはどうしたもんかと悩んだり、 受験間近の不安定な時には一緒になって不安定になったり・・・

 どう考えても頼りない先生であったけれど、 彼女は他の先生に変わりたいとも言わず、ずっと付いて来てくれました。
無事第一志望のところに合格できてからも、 しょっちゅううちの教室にやってきてくれましたが その間隔も次第に開くようになってきて・・・・ これが親離れってやつかな?と、ちょっと淋しさを感じたり・・・

 彼女との思い出は尽きませんが、ただ1つ言えることは この子との出会いがなかったら、今の私はない、と言うことです。 間違いなく教師は、生徒によって成長させてもらうんですね。

 火曜日の試験は、あの演奏ならきっとうまくいくことでしょう。
卒業後のことは「試験のことで頭がいっぱいで、何も考えていない・・・」 とのことでちょっと心配ですが、 「無事卒業が決まったら美味しいものをご馳走してください。」 と言う彼女のリクエストに応えて、 おもいっきり美味しいものを食べて、二人で祝杯をあげることにしましょう! (1月21日日記より)