ゆっくり咲く花・・・

Aちゃんがうちの教室に来たのは、年長さんの時です。
お姉ちゃんが習っているからと、 自動的(?)に連れては来られたのだけど、 特にピアノには興味もなさそうだし、やる気もない・・・

 ぶーっとしてピアノには座るのだけど、 ちょっと難しそうなことをさせようとすると いっそう機嫌は悪くなり大声で泣き出す・・・ (あんまり涙が出てないのに声だけ大きかったなー・・・)

たまにはもう教室に入る前から ぎゃあぎゃあ泣き喚いている・・・

そうそう・・・忘れられない出来事・・・
いつものように不機嫌にやってきた彼女、 ピアノの前で手に持っていた教則本を ポトンと落としたんです。
「Aちゃん、本が落ちたよ。拾ってちょうだい・・・」 と私が言うと、なんと返ってきた言葉・・・

「おまえがひろえーや」・・・    ( ̄○ ̄;)!お、おい

そんなことが繰り返し、 実は私自身、彼女が来る日には朝から憂鬱・・・ 何てこともあったんです。 (もしAちゃん、Aちゃんのお母さま、見てたらごめんなさい・・・)

その彼女も小学校に上がって学年が上がるにつれ、 泣き喚くようなこともなくなり、 依然としてやる気はあまり出ないものの、 すこーしずつですが、本も進んでいきました。

中学生になると、「レパートリーを増やすレッスン」に切り替えました。
さすがにそんな大曲には挑めそうにないので、 最初は名曲の簡単アレンジバージョンなどを渡していましたが、 少しずつ力もついてきて、 トロイメライやサティの曲など、仕上がるまでに時間はかかるけれど レパートリーに加えられるようになってきました。

そして彼女は今高校一年生・・・
前回のレッスンで12曲目のレパートリーが仕上がり、 13曲目、「弾きたい曲ある?」と聞くと、 「ドビッシーの月の光が弾きたい・・」という返事が返ってきました。

今までは何が弾きたい?と言ってもいつも黙ったままで、 私が何曲か示して、その中から選んでもらっていたのですが・・・

嬉しかったのです。
初めて自分から「これが弾きたい!」と意思表示をしてくれたこと・・・ これは、ピアノが彼女にとって とても身近な存在になったということですから・・・

で、少し彼女と話をしました。
「ピアノを習ってきて良かった?」と聞くと、 「うん、良かった・・・」と答えてくれました。
高校生くらいになると、もう周りの子はみーんな辞めてしまってる・・・ その中で細々でも続けてきて、今たくさんのレパートリーもできて・・・ それがよかったなーと思えるのだそうです。

本当に嬉しかったです。

やっぱり大事なことは「待つ」ことなのだ・・・ そう思いました。

で、Aちゃんの次の曲・・・ うーん、ちょっとドビュッシーの「月の光」は今はまだしんどいよねー・・・ と言う事で、月光繋がり(?)でベートーヴェンの「月光」に決定!^-^;

小さい頃からわーっと大きな花を咲かせる子もいるけれど、 Aちゃんのように、10年以上もかけて ゆっくり花を咲かせてくれる生徒もいます。 (H13年11月6日 日記より)