ハーモニーとの出会い

年中さんのYちゃんは、はきはきしてとってもおりこうさんの女の子です。

ピアノも大好き、そして練習も・・・ 「Yちゃんは5才だから、全部の曲毎日5回ずつ弾けるかな?」 と話すと、「うん。できるよ。」
で、教室に入ってくるなりいつも 「せんせ、あのね、Yちゃんは5才だからぜーんぶ毎日5回れんしゅーしたよ。」 と言って、宿題もしっかりと練習してきてくれる子です。

当然ながらとんとんと課題は進み、 曲は片手交互奏から両手奏に入っていきました。
そして、初めての和音が出てきたのです。
メロディーの最後に 左のファとド、右手のファを一緒に弾く・・・という単純なものですが・・・

初めてその和音をポーンと自分の手で弾いた時のYちゃんの表情・・・ 目がまん丸になって口からは小さな「あ〜・・・」という声が・・・
彼女が出会った、初めてのハーモニーです。


大学の時に、短い期間でしたが 子供の指導に関する授業がありました。
それは世界中で使われている子供用の教材を 各班に別れて研究、分析する・・・と言うもので・・・ 私の班は「トンプソン」でした。

研究発表のあと、その授業の講師であった マクガレル先生(今は学長になっておられますが・・・)が こんな話をしてくださいました。

マクガレル先生がピアノを習い始めた時 教材は「トンプソン」だったそうで、 最初の教材「小さな手のための・・・」の最後の曲で、 初めてハーモニーが出てきた時の、 その驚きと感動は忘れられない・・・と・・・

お髭が素敵で、彫りが深く、ブルーの目をしたマクガレル先生・・・
先生の隠れファンだった私と友人は 「マクガレル坊やが、この曲を弾きながら『うわ〜』と思った瞬間・・・  目に浮かぶようだねー。めちゃくちゃ可愛かったろうね〜〜!」 ・・・と、騒いだものです。

この先生が音楽の道へと進む最初の大きな扉を開いたのが、 この瞬間だったのかもしれません・・・

Yちゃんも、初めてハーモニーと出会って以来 和音になっているところがとってもお気に入り・・・
今日のレッスンでも 「せんせ、上のド歌ってね。私下のファ歌うね。」 と2人でハモって遊びました。

今の世の中、子供たちを取り巻く音楽も映像も これでもかと言わんばかりの刺激の強いものだらけ・・・ だけどこうして初めて自分の手で奏でたハーモニーに 感動してくれる子がいます。
こんな瞬間に立ち会えたことに感謝したいです。

そして、私自身音楽の素晴らしさを、 生徒から改めて教えてもらっています。
     (H14年1月11日 日記より)