親と先生の期待に応えるために弾くピアノ・・・

またまた、新しい生徒さんの話・・・この3月からレッスンに来られることになったUさんは、この6月に出産を控えた30歳の主婦の方です。中学3年までピアノを習っていたのだけれど、嫌になってやめてしまい、今になってまた弾きたくなった・・・と言う事でした。
 最初の日に以前使っていた楽譜を持って来て頂くと・・・チェルニー40番は終了し、その他当時弾かれていた曲はベートーヴェンも、ショパンも、中学生とは思えない難易度の高いものばかりでした。おまけにピアノはグランドを持たれていたとかで、なんと驚くなかれ、あの宮沢明子さんのレッスンまで受けられた事があるとか・・・(ちなみに1回のレッスンがウン万円だったそうです・・・ひゃー・・・)
 これは普通のレッスンではないですよ、かなりの才能を認められて、高いレベルの音楽教育を受けられてたんですね、とお話しました。きっとそのまま続けておられたら、私なんかよりはるかにすごいピアノの先生になられたはずで・・・
  彼女がピアノをやめると言った時、ご両親や先生は本当にがっかりされた事だと思います。ただ、当時は、もうピアノが嫌で嫌でたまらなくなってしまっていたのだそうです。
 
 実は・・・胸がちくり、という思いがするのです。うちの生徒でも、才能があり、本当によく練習もしてくれ、コンクールその他でもどんどんと結果を出してくれる子に対しては、親も私もどんどんと気持ちがエスカレートしてしまい、過剰な期待をかけてしまうのです。そんな子ほど、反抗するでなく、従順で私たちの期待にこたえようと、必死になってくれるのですが・・・いつのまにかその子達は、自分のためでなく、その期待に応えるためだけに必死にピアノ弾く、という事になってしまうのかもしれません。
 そして、ある日糸がぷつんと切れてしまうのでしょうか・・・せっかくの才能を潰してしまう、先生害、親害・・・ですね。
 子供達の心の中の声に、きちんと耳を傾けなければ・・・と思う今日この頃です。(2000.3.13 日記より)